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少子化対策はそこじゃない・・・私たちが出産育児をためらう理由

2025/04/19ウェディングについて

もう20年も前から言われていますが、日本各地で子どもの数が減少しています。
2023年に生まれた日本人の子どもは72万7277人となり、1899年に統計が開始されて以来、最も少ない数字となりました。
政府や自治体は子育て支援に注力していますが、減少傾向が止まる気配はありません。
この状況を打開するための方策について、東京にあるニッセイ基礎研究所の天野馨南子・人口動態シニアリサーチャーに話を伺いました。
女性達は出産適齢期は無限にあるわけではないのは十分承知していますが、出産育児をためらう理由と政府の施策とは乖離がありそうです。
(※2024年9月7日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)

出生率の数字に隠された真実とは

厚生労働省の人口動態統計によると、2023年の合計特殊出生率は1.20となり、過去最低を更新しました。
特に東京では1.00を下回り、0.99に落ち込んだことで大きな衝撃を与えています。
しかし、ニッセイ基礎研究所の天野馨南子・人口動態シニアリサーチャーは「出生率という指標は一筋縄ではいかないものです」と警鐘を鳴らします。
合計特殊出生率とは、15~49歳の女性1人が生涯に出産する子どもの数を示す指標です。
一般的に「夫婦が持つ子どもの数」と考えられがちですが、実際には未婚女性も計算に含まれるため、未婚率の高い地域では出生率が低くなります。
例えば、ある地域に既婚女性と未婚女性がそれぞれ5人ずつ、計10人いると仮定します。
既婚女性が全員2人ずつ子どもを産んだ場合、地域全体の子どもの数は10人となり、出生率は1.00です。
この状況で未婚女性2人が他の地域へ移動すると、女性の総数は8人に減りますが、子どもの数は変わらないため、出生率は1.25に上昇します。
つまり、実際の出生数は増えていないのに、指標上は出生率が上がるのです。
これは本当に言われなければ気付きませんね。
天野さんによると、このような現象は全国各地で起きています。
特に、20代前半の未婚女性が就職を機に都市部へ流出する地方では、一時的に出生率が上昇することがあります。
その結果、「女性1人あたりの子どもの数が増えた=少子化対策が成功した」と誤解されるケースが後を絶たないそうです。
出生率の数字だけを見て楽観視するのではなく、人口構造の変化を正しく理解することが求められます。

「重要なのは出生数」少子化対策の本質を見抜く

天野さんが人口減少対策の助言を行っている高知県では、2023年の合計特殊出生率が1.30と全国平均を上回りました。
しかし、同年に生まれた子どもの数は3,380人で、47都道府県の中で下から2番目となっています。
天野さんは、「少子化対策で最も重要なのは、生まれる赤ちゃんの数を減らさないことです。たとえ出生率が高くても、未婚女性が継続的に地域を離れてしまえば、子どもは増えません。少子化対策の成果を判断する際は、出生率という割合ではなく、出生数という実数に注目すべきです」と指摘します。
決して高知県の女性がたくさん子どもを生んでいるわけではないのです。

少子化の本当の原因は「未婚化」なんです!

少子化の根本的な原因は何なのでしょうか。
天野さんが指摘するのは、「未婚化」の進行です。
人口が急増した第2次ベビーブーム(1971~74年)前の1970年と2022年を比較すると、出生数は約193万人から約77万人へと、半世紀で6割も減少しました。
しかし、婚姻数あたりの出生数は1.9から1.5へと2割の減少にとどまっています。
最も大きく変化したのは結婚するカップルの数です。
1970年には103万件あった婚姻数が、2022年には50万件にまで減少しました。
天野さんは「少子化の決定的な要因は未婚率の上昇です。日本では婚外子が少ないため、結婚するカップルが減れば出生数も自然と減ってしまいます」と指摘します。
さらに、天野さんが警鐘を鳴らすのが「アンコンシャス・バイアス」(無意識の偏見)です。
1990年代まで、生涯未婚率(50歳時点で未婚の割合)は男女ともに10%未満でした。
そのため、「年齢を重ねれば誰もが結婚できる」という無意識の思い込みが根強く残っています。
特に、企業経営者や自治体の政策決定者など、高齢層にその傾向が強いといいます。
「少子化は、夫婦が持つ子どもの数が減ったことが主な原因と考えられがちですが、実際はそうではありません。データを正しく分析しないために、婚姻数の減少という本質的な問題に目が向けられず、日本では有効な対策が打たれてこなかったのです」と天野さんは強調します。

結婚意欲は高いが、障壁は依然として大きい現実

天野さんは、若者の結婚意欲自体は依然として高いと指摘します。
その根拠として挙げるのが、東京商工会議所が8月に発表した「東京在勤若者世代の結婚・出産意識調査」です。
この調査は18~34歳を対象に行われ、既婚者を含めて結婚に前向きな若者は全体の86.1%にのぼりました。
独身者に限っても、78.7%が「いずれ結婚するつもり」と回答しています。
一方で、結婚への障壁として「良い出会いがない」「収入や雇用の安定に不安がある」といった経済的・社会的要因を挙げる人が多いことも明らかになりました。
天野さんは、「日本の少子化の原因は、結婚という“入り口”が詰まっていることにあります。
人口減少を食い止めるためには、行政と企業が連携し、若者同士が出会える仕組みを整えたり、安定した雇用を確保したりと、まだできることは多くあるはずです」と強調します。
若者の高い結婚意欲をどうサポートできるか。とても大切なのです。

東京への人口集中が招く地方の少子化

総務省の人口動態調査(2024年1月1日時点)によると、日本の総人口は前年比で約86万人減少しました。
しかし、東京都だけは人口が増加しており、東京一極集中の傾向は依然として続いています。
過去を振り返ると、東京都では1996年以降、女性の転入超過が一度も途切れることなく続いています。
天野さんは、「20代前半の未婚女性が就職を機に地方から東京へ流入し、その数は四半世紀で90万人を超えました」と指摘します。
その結果、若い女性が流出した地域では結婚する人が減り、未婚率の上昇とともに少子化が深刻化しています。
「人口減少に悩む地方では、大卒女性が地元で働ける環境を整えることが欠かせません。
自治体は地元の経済界に対し、『女性の雇用を促進しなければ、若者の流出が進み、出生数が減る』と強く訴える必要があります。
地域の企業も、中長期的な視点を持ち、積極的に女性を雇用する姿勢を持つことが求められます」と天野さんは提言しています。

若者が地元を離れる本当の理由は

天野さんは、複数の自治体で人口問題の専門家として助言を行っています。
人口減少に苦しむ地域と深く関わる中で、強く感じることがあるそうです。
「今の若い人たちは、決して地元を悪く言いません。生まれ育った地域を大切に思い、育ててくれた親や祖父母に感謝し、故郷への愛情を持っています。それでも、学校を卒業すると東京へ出て行くのです。なぜだと思いますか? それが自分の幸せにつながるからです。故郷という『船』は、今の若者が目指す未来へ向かっていません。だからこそ、彼らは地元を離れるのです」
地方では「いつか戻ってきてほしい」と若者に呼びかけますが、一度東京へ出た彼らには、その声はなかなか届きません。
天野さんは、「地元を愛していたはずの若者が、なぜ離れたのか。その理由を深く考えることこそが、少子化対策の第一歩になります」と指摘しています。
地方に根強く残る「家父長制」の文化。女性は若いうちに結婚して子どもを生んで夫を支えるのが当たり前・・・こんな風潮が改善されない限り若い女性はどんどん首都圏に出てくるでしょう。