
スポーツ界では、SNS上での誹謗中傷が大きな問題となっています。
プロ野球DeNAの関根大気外野手(30)は昨年、自身に向けられた悪質な書き込みに対して法的対応を行い、その裁判結果や示談金の内容を公表しました。
プロ野球界では珍しいとされるこの対応の背景には、「現状を可視化することで、同様の被害を少しでも減らしたい」という強い思いがあったといいます。
(※2025年9月20日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)
誹謗中傷と向き合う決断のきっかけ
「SNSのアプリを削除しました」と、ある後輩から打ち明けられたことが始まりでした。
誹謗中傷のダイレクトメッセージが届き続け、「もう見続けるのがつらい」と感じたためだといいます。
そうした中、昨年4月の試合での死球判定を巡り、私自身にも深刻な内容のメッセージが送られてきました。「家族全員が事故に遭えばいい」といった、強い悪意を含んだ言葉でした。
このような表現は、人によっては深く心を傷つけるものです。
実際にどのような言葉が選手に届いているのかを知ってもらう必要があると考え、SNS(X・旧Twitter)で内容を公開する決断をしました。
また、選手会も問題意識を持っており、相談したところ「支援するので法的対応も検討してはどうか」と助言を受けました。
自分の行動によって少しでも同様の被害が減るのであればとの思いから、法的措置に踏み切ることを決意しました。
「他人ごと」にしないための可視化と抑止力
これまでは、著名人が誹謗中傷に対して「法的措置を検討する」と発信しても、その後の経過が明らかにならないケースが多く、受け手にとってはどこか現実味の薄い問題として受け止められがちでした。
具体的な結果や示談金額などが公表されることで、経済的な影響の大きさや、1つの投稿が刑事事件や裁判に発展する可能性があるという現実が伝わり、抑止効果につながるのではないかと考えました。
実際に情報開示請求が認められたのは8件に上ります。
「死ね」といった直接的な表現に限らず、「ゴミ」「消えろ」といった言葉も対象となりました。
これまで開示が認められるか不透明だった表現についても請求が通ったことで、一つの指標となる事例になったと感じています。
示談と寄付に込めた思い、そしてSNSとの向き合い方
これまでに6件の示談が成立しており、1人あたり最大90万円、合計で約500万円となりました。
示談に際しては、「今後一切誹謗中傷を行わない」ことを約束する誓約書への署名を求めています。
また、特に悪質と判断したケースについては刑事告訴にも踏み切っています。
得られた示談金については、裁判費用などを差し引いた全額を認定NPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」に寄付しました。
自身も児童発達支援や放課後等デイサービスの運営に関わっていることから、今回の経緯で得た資金を子どもたちのために役立てたいという思いがありました。
一連の対応については、「野球に集中すべきではないか」といった批判も寄せられましたが、「勇気ある行動だ」と評価する声や、他球団の選手からの理解ある言葉も届いています。
プロ野球の世界では、特に1軍でプレーする選手であれば、多くの人が同様の被害を経験しているのが現状です。
とはいえ、周囲の反応を意識して行動したわけではありません。
事実を明らかにし、その結果として誹謗中傷が減少することを目指していました。それが今回の取り組みの本来の目的です。
「SNSをやめればよい」という意見もありますが、発信することも選手にとって大切な権利の一つです。
実際、今年5月中旬に1軍へ昇格した際には、球団公式SNSの投稿に多くの応援コメントが寄せられました。
ファームでの活動中には届きにくいファンの声を知ることができ、「待っていた」という言葉に背中を押され、再び1軍でプレーしたいという思いを強くしました。
言葉の境界線と向き合う姿勢
いわゆる「愛のあるヤジ」と誹謗中傷の違いを明確に線引きするのは簡単ではありません。
ただ、大切なのは受け取る側の感じ方であり、不快だと感じるのであれば、それはやはり受け入れがたいものだと思います。
私自身は、応援したい相手に対しては、どのような状況でも前向きな言葉をかけたいと考えています。
そのような言葉こそが、相手にとって前へ進む力につながるのではないでしょうか。

